[PR]
この記事では、「債権回収会社は本当に裁判を起こすのか?」という疑問について解説していきます。
裁判は、「債権回収の最終手段」とも言われています。[1]
しかし、だからといって、本当に裁判になってしまうのでしょうか?
この疑問について、実際の裁判例や、裁判所の統計情報、債権回収に詳しい弁護士の著書などを参考に、わかりやすく解説していきます。
この記事を書いた、ライターの安田健次郎です。
今回のテーマは、「債権回収会社は本気で裁判を起こすのか」です。法律や訴訟など、専門的な話になるので、しっかりとエビデンス(根拠)を確保しながら解説していきます。

この記事の目的
この記事の目的は、債権回収会社から督促を受けている方が、今後の裁判など法的措置に備えるために、役立つ情報をお届けすることです。
なお、実際の訴訟リスクや法的トラブルについては、かならず法テラスや弁護士・司法書士にお問合せ下さい。当サイトは、個人の係争に助言するものではないことをご了承下さい。
債権回収会社は、督促を無視すると本当に裁判を起こすの?
それでは、債権回収会社は本当に裁判を起こすのか、解説をはじめましょう。

本題に入る前に、「債権回収会社とは、どんな会社なのか」は、なんとなくご存知でしょうか?

滞納金や未払金の回収をする、専門の企業ですよね。クレカとかローンとか、滞納があると債権回収会社から督促が来るって聞きました。

はい、それだけ知っていて頂ければ、まずは大丈夫ですよ!
まだ債権回収会社についてまったく知らない…という方は、次の記事もあわせてご覧ください。
債権回収会社から訴えられた!本当にあった裁判の話
まずはわかりやすく、実例からご紹介しましょう。
「債権回収会社に裁判を起こされた」事例について、時効援用に詳しい司法書士西村竜也事務所が報告しています。
Kさんは裁判所の封筒を3通持って来所されました。
中身を拝見すると、訴状と呼出状でした。
支払ができていなかった3社の債権をある債権回収会社が買い取って3つの訴訟を同時に提起してきていました。出典:債権回収会社から同時に3件の裁判を起こされた事例-司法書士西村竜也事務所 (2020/02/27閲覧)
この事例では、債務者の「Kさん」は、3社の滞納を抱えた多重債務者だったようです。
その3社の債務を、ある債権回収会社がまとめて買い取り、裁判を起こしてきた…という事例です。

本当に訴えられちゃったんだ…!やっぱり債権回収会社は、本当に裁判をするんですね!

はい。信頼できる司法書士による事例報告ですから、確かでしょう。
ご紹介した事例では、その後、西村司法書士の尽力により、時効援用で解決ができたそうです。しかし、必ずしも訴外での解決ができるとは限りません。裁判を起こされる前に、早めに対処することが大切です。

ひとまず、「債権回収会社に本当に裁判に訴えられた」事例があると確認できました。
債権回収会社から裁判に訴えらえるのは、珍しいことではない?

実際に訴えられた事例があるのは、わかったけれど…。でも、裁判になるなんて、珍しいことじゃないんですか?

いえ…。それが、そうでもないんです。お金の返済や支払を求める裁判は、一年間で33万件以上も起こされているんですよ。
裁判所が毎年発表している、「司法統計」を見てみましょう。
司法統計とは、一年間にどんな法的手続きが、どのくらい行われたのかを、裁判所がまとめている統計資料です。
お金の支払いや返済などに関する裁判は、民事事件のうち「金銭を目的とする訴え」として集計されています。[2]
このデータによると、滞納・未払いなど金銭がらみの裁判は、一年間で332,601件も新たに起こされています。

この数字は、債権回収会社による訴訟だけではなく、金銭関係の訴訟件数の全体を示すものです。
とはいえ、返済トラブルや未払い・滞納などで、これだけ裁判が起きているわけですから、債権回収会社も実際に裁判を起こしていると考えて良いでしょう。

一年で33万件…!多すぎて、ちょっと想像できません…。

そうですね…。単純計算ですが、
“一日あたり900人以上が訴えられている”
と考えると、想像しやすいかと思います。

そうやって考えると、債権回収会社から裁判に訴えられるのも、珍しいことじゃなさそうですね…。
債権回収会社に払えない…それでも裁判を防ぐ方法は?

債権回収会社から訴えらえる…って、けっこうリアルなことなんですね。でも、払えない場合って、訴えられるしかないんでしょうか…。

大丈夫ですよ!「債務整理」や「時効援用」といった解決方法があります。
「なかなか返済ができない、難しい…。」
そんな時は、裁判になってしまう前に、「債務整理」や「時効援用」を検討してみましょう。
最後の返済から5年以上たっていれば、「時効援用」
最後の返済から5年以上経っている場合、時効で返済をゼロ円にできる可能性があります。「時効援用」について、専門家に相談を行いましょう。
まだ5年以上たっていないが、返済が難しい場合は「債務整理」
返済が難しい場合、「債務整理」という手続きで、返済を減額・免除できる可能性があります。法テラスや弁護士・司法書士に、債務整理の相談をしてみましょう。

債務整理も時効援用も、法律にかかわる手続きです。法律の専門家である弁護士・司法書士や、法テラスのサポートダイヤルで相談してみましょう。
法テラス・サポートダイヤル
法テラスは、国が設置した法的トラブル解決のサポート機関です。
サポートダイヤルのオペレーターは個別の法律相談や法的判断を行うことはできませんが、相談内容に応じて、制度や手続きの紹介や法律相談窓口を案内してもらえます。
電話番号 | 0570-078-374 |
---|---|
営業時間 | 平日9時~21時 土曜9時~17時 (祝日・年末年始を除く) |
URL | https://www.houterasu.or.jp/ |
備考 | ※法律相談は、事前の予約が必要となります。 |
借金解決に強い弁護士・司法書士
借金問題の解決(債務整理・時効援用)に強い弁護士・司法書士も、無料の相談窓口を設置しています。
利用方法 | WEBからメールまたは電話 |
---|---|
受付時間 | 24時間対応あり |
受付日 | 365日対応あり |
相談料 | 無料 |
その他 | ・匿名相談、無料減額相談あり ・無料相談後、初期費用ナシで債務整理スタートも可 ・最短即日の取り立てストップも可 |
※弁護士事務所・司法書士事務所により異なります。

弁護士や司法書士に依頼すると、債権回収会社は、すぐに督促をストップしますよ!
弁護士や司法書士が入り、「受任通知」が送られた場合、債権回収会社はただちに督促を止めることになっています。これは、債権回収会社について定めた法律である、「サービサー特措法」で決められています。[3][4]
また、弁護士や司法書士が入れば、裁判などの法的措置も取りやめるのが一般的です。
債権回収会社は、いつ裁判を起こすのか

債権回収会社に訴えられる前に、弁護士や司法書士に相談したほうが良い…ってことですけど、債権回収会社は、いつ訴えてくるんですか?

正直に言って、いつ裁判所に申立てをされるかは、わかりません。ただ、“いつ訴えられても、おかしくない”と考えたほうが良いでしょう。
そもそも、債権回収会社から督促が来ている時点で、何か月も滞納が続いている人も多いかと思います。
すでに債務不履行が長期化しているケースですから、いつ法的措置に踏み切られても、おかしくありません。

とにかく、早めに相談するのに越したことはないですよ!
「裁判になるかも…」と不安を抱えた毎日は、精神的にもつらいですからね。
債権回収会社とのトラブルで、裁判に訴えられやすい人の特徴

ところで、債権回収会社に訴えられやすい人の特徴って、何かあるんですか?

うーん…難しい質問ですね。
返済を放置していれば、最後には訴えられてしまうでしょう。ただ、訴えられやすくなる原因は、いくつか考えられます。
たとえば次のような場合は、裁判に訴えられる可能性が高まると考えられます。
督促を無視して、ずっと放置を続けている人
「連絡が取れない」「支払の意思確認ができない」といった理由で、法的措置に踏み切られる可能性があります。

「払えないのに、債権回収会社に連絡するのは不安」といった方は、弁護士・司法書士に相談し、できれば間に入ってもらうと良いでしょう。
自分で連絡して、不用意な発言をしてしまった人
たとえ悪気がなくても、「返済意思がない」と見られるような発言をしてしまえば、法的措置に踏み切られる可能性が高くなるでしょう。
たとえば、自分の事情を説明しようと思って、「しつこい取り立てをやめてもらえませんか?」とか、「いくら言われても、無理なものは無理です」等と言ってしまうと、誤解を招いてしまうかもしれません。
ほかにも、「借金には時効があるので払いません」といった発言も、たとえそれが事実だとしても、返済意思が無いとみられてしまいそうですね。

自分で連絡すると、つい焦って言っちゃいそうだなぁ…。

どんな発言でも、不用意に言えば、誤解を招いてしまう恐れはあります。そうした“すれ違い”を防ぐためにも、弁護士や司法書士がいるんですよ。
踏み倒そうと考えている人
「返済を踏み倒そう」と考えている人も、すぐに裁判に訴えられてしまうでしょう。
債権回収会社は督促・回収のプロフェッショナル。「踏み倒します」と言わなくても、訴訟準備の調査などで、踏み倒すつもりかどうかは、すぐにわかります。
「払えるけれど払わない」という行為は、決して良いことではありません。最初から払わないつもりで借りた…などの場合は、詐欺罪に問われる恐れもあります。返済に無理のない場合は、かならず支払うようにしましょう。
裁判になる理由は?踏み倒しを防ぐ「差し押さえ」や、時効の更新も

それにしても、なんで債権回収会社は、裁判なんて訴えてくるんでしょう?

そうですね…「裁判」というと大変なイメージがありますが、これも正当な権利の行使です。目的はやはり債権回収ですが、もう少し詳しく説明していきましょう。
裁判など法的措置による回収に踏み切るのは、いくつか理由が考えられます。
踏み倒しをされないよう、強制執行(差し押さえ)で債権を回収するため
裁判などの法的手続きに踏み切る理由として、一番に挙げられるのが、「強制執行(差し押さえ)」のためです。
差し押さえは、債務者の財産の一部を、強制的に回収できる措置です[5]。
動産執行、不動産執行、債権差押といった種類があります。
たとえば、
- 職場から受け取る給与
- 銀行口座の預貯金
- 保険の解約返戻金
- 賃貸住宅の敷金返還請求権
…なども、差し押さえの対象になります。
こうした差し押さえにより、強制的に債務者の財産を回収できるため、踏み倒しを防ぐことができます。
ただし、差し押さえ(強制執行)は非常に強力なため、正当な債権者でも、勝手に行うことはできません(自力救済禁止の法理)。裁判の確定判決など、「債務名義」を取得しなければ、強制執行の申立てを行うことはできない仕組みになっています[6]。

「踏み倒しを防ぐために、差し押さえで強制的に財産を回収する。その前段階として裁判を起こす」…という風に考えても良いでしょう。
時効の更新(旧民法 時効の中断)
裁判などの法的措置を行う理由の一つに、「時効の更新」(旧民法 時効の中断)があります。
債務には時効がありますが、その時効のカウント開始日(時効の起算点)をリセットするのが、「時効の更新」です。
時効の更新を生じるものには、請求、差し押さえ、仮差押、仮処分、債務承認などがあります。しかし、もっとも確実な方法が、訴えを提起して請求する方法だとされています。

実際に、「もう借金が時効だと思っていたのに、知らないうちに裁判を起こされていて時効援用できなかった」といったトラブルも多いようです。
裁判(通常訴訟)だけではない!支払督促や少額訴訟など、他の法的手続きも

債権回収会社が裁判を起こすのも、やっぱり債権回収のためなんですね。でも、少額の取り立てなら、訴訟費用で赤字になるから、裁判なんか起こさないんじゃないかな…?

その考え方は、残念ながら正しいとは言えません。費用を抑えて債務名義を取得できる、「支払督促」や「少額訴訟」があるからです。
私たちがイメージする裁判は、「通常訴訟」と言われる種類の法的手続きです。しかし、裁判所で行える手続きは、通常訴訟だけではありません。ほかにも「支払督促」「少額訴訟」などがあります。[7][8]

債権回収会社の場合、「支払督促」を使うケースも多いようです。
支払督促は、書類審査のみで行える、簡易な法的手続きです。金銭の支払いを求める場合にのみ利用できます。[7]
また、費用もあまり掛からず、債務者を一人訴えるのに、5000円~数千円程度の手続き費用で済むようになっています。[5,P135]

支払督促を使えば、時間も費用もほとんど掛けずに、差し押さえ(強制執行)に進むことも可能です。

じゃあ、「訴訟費用で赤字になるから、差し押さえなんて受けない」みたいな話は、まったく違うんですね。

はい。実際には、「こんな少ない金額なのに…」と思えるような滞納・未払いでも、差し押さえを受けてしまう恐れがあります。
そもそも、「債権回収会社から督促を受けている」というのは、それ自体がたいへんな状況です。
「裁判になるかどうか…」といったことを考えるまでもなく、払えない状態を解決する必要があります。

督促を受けながら、裁判や差し押さえの不安を抱えて過ごす毎日は、一日でも早く終わらせましょう!
脚注、参考資料
- [1]【債権回収】裁判・訴訟による債権回収のメリット・デメリット | 札幌「弁護士法人 赤渕・秋山法律事務所」 (2020/02/27閲覧)
- [2]第7表 第一審通常訴訟新受事件数―事件の種類別―全簡易裁判所 (平成30年度司法統計 裁判所) (2020/02/27閲覧)
- [3]法務省:債権管理回収業に関する特別措置法の概要 (2020/02/27閲覧)
- [4]債権管理回収業に関する特別措置法 第18条第8項 (2020/02/27閲覧)
- [5]債権回収の法律と実務 奈良恒則 (三修社 2016) ISBN978-4-384-04665-6
- [6]裁判所|債務名義とは何ですか。 (2020/02/27閲覧)
- [7]裁判所│支払督促 (2020/02/27閲覧)
- [8]裁判所│少額訴訟 (2020/02/27閲覧)