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今回は、「消滅時効の援用を自分で行いたい!」という人のために、注意点を解説していきます。
借金などの返済義務を、時効で帳消しにする「債務の消滅時効の援用」。時効援用、あるいは単に時効と呼ばれることもあります。
「借金の時効は、時効援用通知書を作って、内容証明で送るだけ」
「かんたんに自分でできる」
こうした話もネット上で出回っていますが、実際にはそれほど簡単ではありません。
そこで今回は、時効援用を自分で行う場合のリスクや注意点を解説していきます。
この記事の目的
この記事の目的は、ネット上にあふれる「時効援用は自分でできる」といった意見について、より正確な情報をお届けしていくことです。
時効援用について基本的な情報は、「時効援用とは」の記事で解説しています。
時効援用は「自分でできる」という話は、実態とことなる部分がいくつもあります。
あいまいな情報に惑わされないよう、しっかりとファクトチェックを行いながら、解説をお届けしていきます。

時効援用は、内容証明+配達証明で「時効援用通知書」を送るだけではない
「債権回収会社から督促状が来たら、時効援用すれば返済義務を無くせる」という話をよく見かけます。
「時効援用通知を作って、配達証明をつけた内容証明郵便で送るだけ」
「自分で簡単にできる」
と言われることもありますが、実際にはそうではありません。
時効援用は、相手から反論されて、裁判になってしまうリスクもあるからです。時効援用の失敗について、法律専門家である司法書士の解説を見てみましょう。
消滅時効援用をした後になって、相手方から訴訟や支払督促により時効が中断しているとの主張をされることがあります。
出典:消滅時効の援用が失敗したとき | 千葉県松戸市の高島司法書士事務所 (2020/01/30閲覧)
相手方から「訴訟や支払督促により、時効が中断しているとの主張をされる」とありますね。
時効の中断(時効の更新)とは
借金の時効は、「いつ時効になるかが、場合によって変化する」性質があります。訴訟や支払督促など、法律で「時効の更新」と呼ばれる出来事があると、時効が成立する日が「その時点から5年」にずれ込んでしまいます(改正民法第147条 時効の更新※旧民法・時効の中断)。

かんたんに言えば、自分では「もう時効だろう」と思っていても、実は時効がさらに5年間先延ばしになっている…ということがあるんです。
時効援用通知を送ると裁判も…失敗した場合のリスク

まだ時効になっていないのに、時効援用通知を送ってしまうと、どうなるの?

「まだ時効になっていませんよ」と反論されて、取り立てが続くだけなら良いですが…。裁判に訴えられてしまう可能性もあるでしょう。
実際に、相手から反論を受けて裁判になってしまった…というケースもあります。
以下はサンプルですが、時効援用通知に対して、このような反論の書面が返ってくることもあります。

こちらの書類はサンプルですが、一般的に「時効になっていないのに、時効援用通知を送った」…となると、
「消滅時効は成立していない」
「法的措置を取る」
といった反論が返ってくることは、普通にあり得ることです。
こうした失敗を避けるためにも、少なくとも、「本当に時効になっているか」「時効援用しても大丈夫か」だけは、法律の専門家に相談して、確認しておきましょう。
NHKの時効援用も、最高裁までもつれ込む大変な訴訟に
時効援用といえば、NHKの受診料の時効についても話題になったことがありました。
ある男性がNHKの受診料未払いについて、消滅時効の援用を行ったところ、NHK側から反論されて裁判になった事案です。
受信料を21年滞納していた大阪市の男性相手に、NHKが支払いを求め起こしていた訴訟で、最高裁第三小法廷は7月17日、男性に5年分の受信料などの支払いを命じた大阪高裁判決を支持し、男性側の上告を棄却した。
出典:受信料「時効20年問題」でNHK勝訴、最高裁は「例外」と判断…定期金債権が争点 - 弁護士ドットコム (2020/02/08閲覧)
この最高裁判決では、「上告を棄却する」…つまりNHK側の勝訴となりました。
一方で、この判決については賛否両論もあり、「最高裁の判断はおかしいのでは」という人や、「そもそも法律の作りがおかしい」といった声もあります。
ただし、ここでは判決の妥当性について論じることはしません。それよりも注目したいのは、“そもそも最高裁までもつれ込むような大事件になった”ということです。
裁判は、地裁⇒高裁⇒最高裁…何年も法廷で争う場合も
どんな裁判でも、いきなり最高裁で争うことにはなりません。まず地方裁判所(地裁)で裁判があり、その判決に不満があるときは高等裁判所(高裁)でさらに争い、それでもまだ決着がつかなければ、最高裁判所(最高裁)で争うことになります。
つまり、NHK受信料の時効についても、地裁でも高裁でも決着がつかず、最高裁までもつれ込んでしまった…ということです。

ニュースによると、争いの元になったNHK受信料の請求は、2016年にあったそうです。それで、最高裁判決が出たのは2018年…2年間も法廷で争ったんですね。

時効援用を主張したのは、大阪市に住むごく普通の男性です。もちろん弁護士のサポートは受けていたと思いますが…それでも、普通の人が2年間も裁判で争うなんて、とても大変だった思います。

そんなに大変な思いをしても、結局は負けてしまったんですね…。
このNHK受信料の裁判は、時効援用のなかでも、かなり特殊なケースかもしれません。しかし、「時効援用は、何年も裁判で争うことになる可能性もゼロではない」と言えるでしょう。
こうしたリスクもしっかりと踏まえて、時効援用を自分で行うべきかどうか、慎重に考えていきましょう。
「時効援用ぐらい自分でできる」という意見もあるが…
借金などの時効援用は、相手から反論を受けて、訴訟になってしまう恐れもあります。実際に時効をめぐる訴訟で、2年間も裁判で争い、最高裁までもつれ込んだ事例もご紹介しました。
ところが一方で、「時効援用ぐらい自分でできる」と主張する声も確かにあります。
ある弁護士の方が、匿名のブログで次のように書かれています。
取引明細の取得は、請求書の連絡先に電話し、「請求の根拠を確認したいから根拠資料を送ってくれ」と言うだけで済みます。時効援用の書面は、さすがにいきなり書けと言われて書ける人はいないでしょうが、「消滅時効 例文」なんかでネット検索すれば、いくらでも文案の紹介サイトがヒットします。そして、内容証明郵便の利用方法は、ネットで調べるなり郵便局に行って教えてもらうなりすればいいだけです。
資料請求は電話一本。書面の検索と書き換えは30分。内容証明郵便の利用方法を調べるのに30分。合計1時間あれば、自分でできてしまうことです。
出典:時効援用くらいは自分でできそうだが… - 日々起案 (2020/02/08閲覧)
これを見ると、「弁護士が言っているのだから、やはり時効援用は自分でできるのでは」と思えますよね。
ところがこのブログ、実はコメント欄に続きがあるのです。
「自信が無いならやめておいたほうがいい」という答えに
「時効援用ぐらい自分でできる」と書かれた、ある弁護士のブログ。そのコメント欄に、「別の司法書士事務所で言われたことと違う」といった質問がありました。
先日、ウイズユー司法書士事務所という所に、カードキャッシング等についての消滅時効の援用について相談をしたのですが、
(…中略…)
端的に言うと、個人で行うのは極めてハイリスクなので、プロに任せた方が良いとの事を言われました。
この司法書士事務所が言っている、個人での時効援用手続きはハイリスクであるというのは、嘘なのでしょうか?
出典:時効援用くらいは自分でできそうだが… - 日々起案 (2020/02/08閲覧)
ある人が『ウィズユー司法書士事務所』に時効援用を相談したところ、「個人で行うのはハイリスク」との答えだったそうです。
この質問を受けて、「時効援用は自分でできる」とブログを書いた弁護士も、次のように答えています。
その司法書士の先生がおっしゃったことは、本質的には私が書いたことと同じです。「やろうと思えば自分でできるが、確実さを求めるなら専門家に依頼すべき」ということですね。
ハイリスクかどうかはその人の能力次第なので一概には言えません。
少なくとも、ネット上の例文の意味内容を理解できなかったり、債権者に対してこちらの用件のみを明確に伝える自信がないなら、やめておいた方がいいでしょうね。出典:時効援用くらいは自分でできそうだが… - 日々起案 (2020/02/08閲覧)
このように、「時効援用は自分でできる」とブログを書いた弁護士も、「その人の能力次第」「自信がないなら、やめておいたほうがいい」と答えられています。
能力次第ではあるものの、「自分で時効援用をするのは、やめておいた方がいい」という結論で一致したようですね。

ちなみにですが、ここで名前の出てきた「ウィズユー司法書士事務所」は、借金解決や時効援用に強いことで有名です。テレビ番組での出演歴もあり、当サイトも注目しています。
名称 | ウィズユー司法書士事務所 |
代表者 | 奥野正智 大阪司法書士会 第2667号 簡裁認定番号 第312416号 大阪府行政書士会 第7123号 |
電話番号 | 0120-835-011 |
受付時間 | 24時間365日 |
WEB | 公式サイトはコチラ |
⇒当サイトによる、ウィズユー司法書士事務所のレビュー記事はこちらになります。

ブログを書かれた弁護士の先生も、相談先がわかればご紹介したかったのですが…匿名ブログで書かれているので、わかりませんでした。
この内容が理解できれば大丈夫?時効援用通知書の例文

時効援用は自分でできる…とされた弁護士の先生も、
- 時効援用通知書の例文を見て、その意味や内容を理解できる
- 債権者に対して、こちらの用件のみを明確に伝えられる
…こうした能力が必要だとおっしゃっています。
それでは実際に、時効援用通知書の例文を見てみましょう。例文を見て内容が理解できるかどうかが、「自分で時効援用」の一歩目です。
滋賀県の草津駅前法律事務所が、時効援用通知書の書式を、リンクフリーで公開しています。
名称 | 草津駅前法律事務所 |
代表者 | 中井陽一 滋賀弁護士会 第31593号 |
電話番号 | 077-565-8955 |
受付時間 | 営業時間:午前9:30~午後8:00 最終電話受付午後7:00。木曜のみ午後5:00まで |
WEB | https://www.kusatsu-ekimae.jp/ |
それでは、この法律事務所が公開している「時効援用通知書の書式」を見ていきましょう。
このページはリンクフリーですが、この書式を利用したいかなる不具合についても、草津駅前法律事務所では責任を負いません。また、この書式の利用方法に関する、電話・メールでのご質問には回答致しかねます。
出典:消滅時効援用通知書の書式 - 滋賀 弁護士|草津駅前法律事務所 (2020/02/08閲覧)
「時効援用通知書の書式」の文面
それでは、文面を見ていきましょう。
まず最初はタイトルです。「消滅時効援用通知書」となっています。

消滅時効の援用を通知する書類、ということですね。債務の消滅時効は、援用しないと効力を発揮しないので、こうした書面が必要になります。
次に、宛先です。こちらの書式では「〇〇クレジット 御中」となっています。

これだけでも問題は無いのかもしれませんが…。法的な文書になりますから、相手の事業所所在地、電話番号、代表者氏名なども併せて記載したほうが丁寧かと思います。
続いて本文です。
「貴社は,私に対して,下記債権を有していると主張されていますが,既に消滅時効期間が経過しているため,本書面をもって,下記債権の消滅時効を援用します。」

この文章を理解するためには、「債権・債務とは何か」や、「消滅時効」の知識が必要です。
「債権・債務」、「消滅時効」について、詳しくは、当サイト内の解説記事をご覧ください。
続いて、『記』の部分に移ります。
【債権の種類】 貸付金
【契 約 日】 平成○年○月○日
【最終弁済日】 平成○年○月○日
【残 元 金】 金○○円
このような形式の記載になっています。
債権の種類は『貸付金』となっていますが、必ずしも貸付金(借金)にあたるとは限りません。
たとえば、NHKの受信料や家賃滞納などの場合は、貸付金ではないので、それぞれに応じた債権の種類を正確に記す必要があります。また、契約日、最終弁済日、残元金がわかっている必要があります。

この部分は、人それぞれの債務状況によって変わります。自分の債務状況を正確に把握していることが重要です。
続いて後半の文章です。
「これにより,私の債務は消滅致しますので,今後,請求等をされないようにお願いします。」
となっています。

「もう借金は無くなったから、請求をしないでください」という意味ですね。

言葉の意味としてはそうですが、「これで本当に借金が無くなる」とは限りません。
たとえば、「時効の起算点が違っている」「相手が債務名義を取得している」など、実際には時効がまだ完成していないケースもあります。
そうした場合、相手から「まだ時効になっていない」と反論を受け、裁判になってしまう恐れもあります。

時効援用通知書は、あくまで「わたしは時効が成立したと考えていますよ」と主張するものです。書いてある内容が正しいと、証明する書類ではありません。

確かに…この書類だけなら、ウソを書こうと思えば、いくらでも書けちゃいますよね。

ウソをつく気がなくても、たとえば最終弁済日を勘違いしていたり…とか、そういったミスをする可能性もありますよね。
内容証明郵便は、「内容の正しさ」を証明するわけではない

あ、わかりましたよ!時効援用通知書だけでは、いくらでもウソを書けてしまうし、間違いがあるかもしれない…だから、内容証明で送るんですよね!

残念ながら…よくある勘違いです。内容証明は、「手紙の内容が、事実として正しい」と証明するわけではないんです。
内容証明郵便は、「書いてある内容が事実だ」と証明するものではありません。書いてある内容が事実かどうか、郵便局でチェックすることは不可能だからです。
内容証明郵便が証明するのは、「手紙の文面は、確かにこのように書かれていた」ということです。
たとえば、【こんにちは】と書いた手紙を送ったのに、
「あなたの手紙には、【こんにちは】なんて書いてなかった」
「むしろ【こんばんは】と書かれていた!」
…と言われてしまうのを防ぐために、内容証明郵便があります。

「言った、言わない」を防ぐ意味では、とても重要です。しかし、言った内容が正しいかどうかまでは、証明できません。
こうした内容証明郵便の効力について、より詳しい解説は、こちらの記事をご覧ください。

つまり…内容証明郵便で時効援用通知書を送っても、「時効の証拠」にはならないんですね。

「時効の証拠」ではなく、「時効援用の主張をした」という証拠にはなります。これはこれで重要なので、内容証明郵便で送ることになりますが…。
ただ、「内容証明で送ったから、絶対に書いてある通りになる」というワケではないんです。その点は注意が必要ですね。
一人で抱えて無理をせず、法律専門家に相談を

時効援用通知書の中身を理解するだけでも、かなり大変ですね…。それに、内容証明郵便の仕組みも勘違いしてたし…。

お疲れさまです。ここまでの内容だけでも、かなり難しいですよね。でも、まだ自分で時効援用するためには、知っておくべきことがたくさんあります。

('A`)正直、もうかなり疲れちゃいました…。

自分で時効援用を実際におこなうのは、もっと大変なんですよ。なので無理をせずに、早めに法律専門家に相談してくださいね。
時効援用通知書を書くためには、取引明細の請求も必要

ところで…先ほどの時効援用通知書の書式ですが、いざ自分で書こうと思うと、悩んでしまう所がありませんか?

例文の文章もちゃんと理解できてないし、わからない所だらけだけど…。「契約日」とか「最終弁済日」とかは、困っちゃうかなぁ。いちいち覚えてないですし…。

そうですよね。いつ契約して、最後に返したのがいつか…なんて、正確に覚えている人のほうが珍しいですよ。
なので、こうした情報を確認するために、「取引明細」を取り寄せる必要があります。
取引明細とは、これまでの借金の取引を記録したものです。いつ契約して、何日にいくら返して、残債務はいくらで…といったことが記録されています。

取引明細があれば、契約日も最終弁済日も、残元金もわかるんですね!どこから取り寄せるんですか?

基本的には、借りた相手に言って出してもらいます。たとえばプロミスの借金なら、プロミスに言って取引明細を出してもらうわけです。

えっ?それってつまり…請求をしてくる相手に、直接たのんで取引明細をもらうってこと?そんなのできるかなぁ…。
「自分の用件を明確に伝える」能力が必要
時効援用を自分で行うためには、債権者(借りた相手)から、取引明細を取り寄せる必要があります。
この時、「取引明細をください」という内容だけを、明確に伝えることが大切です。

先ほどの弁護士さんのブログでも、時効援用を自分でやるためには、
「債権者に対して、こちらの用件のみを明確に伝えられる」
…ことが大切だと書いてありましたね。

「取引明細をください」以外のことは、言っちゃダメってことですか?

そう考えたほうがいいでしょう。「債務承認」をしてしまうと、時効援用ができなくなるからです。
ちょっとした一言で、時効援用はできなくなる…債務承認に要注意!
債務承認とは、借金(返済義務)があることを認める言動です。この債務承認を行うと、時効期間がリセットされてしまいます。
時効援用に詳しい「アルスタ司法書士事務所」による解説を見てみましょう。
時効期間の進行中に一度でも債務があることを認めたのであれば、その時点で時効は中断し、時効期間はリセットされてしまいます。時効期間がリセットされたということは、改めて時効期間が経過しない限り、時効の援用はできないということになります。
注意しなければいけないのは、「返済」は債務承認にあたるということです。
債務があることを認めたからこそ返済をするのですから、少額でも返済をすれば債務を承認したことになり、時効は中断してしまいます。同様に、支払いを猶予してくれるように申し入れたりすることも、時効中断に当たります。出典:消滅時効相談センター | アルスタ司法書士事務所 (2020/02/08閲覧)
名称 | アルスタ司法書士事務所 |
代表者 | 大塚勇輝 大阪司法書士会会員 簡裁認定司法書士 第1012023号 野間知洋 大阪司法書士会会員 簡裁認定司法書士 第1312048号 |
電話番号 | 0120-371-002 |
受付時間 | 24時間365日 |
WEB | 公式サイトはコチラ |
⇒当サイトによる、アルスタ司法書士事務所のレビュー記事はこちらになります。
解説にある通り、「債務(返済の義務)があることを認める」と、債務承認となり時効期間がリセットされてしまいます。
たとえば、【時効まであと3ヵ月】というタイミングで、債務承認が起きたとしましょう。すると時効期間がリセットされ、その時点から再び【時効まであと5年】になってしまいます。

「ふりだしに戻る」ってイメージですね。でも、債務承認をしなければいいんでしょ?

ところが、これまた簡単な話ではないんです。先ほどの「アルスタ司法書士事務所」の解説にもありますが…。
たとえば少額だけでも返済したり、支払いの猶予を求める発言だけでも、債務承認になってしまうんです。

それも気を付けていれば大丈夫なのでは…?

では、実際にちょっと試してみましょうか。債務者のつもりになって、会話シミュレーションをしてみましょう。
債務承認は気を付けていても防げない?会話シミュレーション

「すみません、取引明細を発行してほしいのですが…。」

「お取引明細ですね。かしこまりました。ところで、ご返済のほうが滞っておりますが、請求書はご確認いただけておりますでしょうか?」

「えっ、請求書ですか…その、届いてはいますが…。」

「ご請求内容はそちらに書いてある通りですが、今月はお支払い頂けますでしょうか?」

「えっと、すみません、今月はちょっと難しいです」

はい、今のが債務承認です!
これであなたは、時効がリセットされました。時効完成まで、さらに5年です。

ええ、今のでですか!?そんなつもりじゃなかったのに…。
「いつお支払い頂けますか?」と聞かれて、「今月はちょっと厳しいです…」。この返答でも、『返済の猶予を求める=返済義務があることを前提とした発言』となり、債務承認と捉えられてしまいます。
このように債務承認は、自覚がなくても、知らないうちに行ってしまう恐れがあります。
こうした仕組みもあるため、時効援用を自分で行う場合は、「債権者に自分の用件のみを伝える」=「債務承認をしない」能力が必要になります。
まとめ:時効援用を自分で行うために
それでは、時効援用を自分で行うためのポイントをまとめていきましょう。
失敗した場合、裁判になってしまう恐れがある

自分では「もう時効」と思っていても、まだ時効が完成していない場合があるんです。
そうした場合に、「まだ時効にはなっていない」と相手から反論を受けて、裁判になってしまうことがあります。

NHK受信料の時効についても、裁判に2年もかかって、最高裁まで争って、結局負けてしまったんですよね…。
「自分でできる」という弁護士も、「能力がなければ、やめたほうがいい」という結論に

時効援用は自分でできる、とブログに書いていた弁護士さんも、最終的には「能力がなければ、やめたほうがいい」との結論になっていました。

時効援用の仕組みをちゃんと理解して、さらに債権者に自分の用件だけを明確に伝える力も必要なんですよね。普通の人には、難しそうだなぁ…。
時効援用通知書の内容や、内容証明郵便の効力も正しく理解する必要がある

時効援用通知書についても、例文をコピペすれば良いわけではありません。内容を正しく理解し、内容証明郵便の効力も把握する必要があります。また、契約日や最終弁済日など、債務状況も正確な情報が必要です。

例文をコピペして、ちょっと書き換えればOK…なんて話じゃないんですね。
債務承認をしてはいけない

時効援用通知書を作るためには、取引明細を取り寄せる必要がありますが…。その際、「債務承認」をしないよう、注意が必要です。

「今はお金がなくて払えません」「来月まで待って下さい」とかの発言でもダメなんですよね。わかっていても、話の流れでついウッカリ…。それで時効援用ができなくなっちゃうんですよね。
時効援用は、自分一人で行うのはハイリスク
このように、時効援用を行う場合の注意点を見ていくと、「自分一人で行うのはハイリスク」という結論が正しいように思います。やはり時効援用は、借金の時効に強い弁護士・司法書士に相談して行うほうが良いでしょう。